ふいちゃんの中国日記

文化編/伝統・風習

緑の帽子

2006年1月14日

 日本では緑の帽子は特別の意味はない。だからどういう色の帽子を被るかはあくまでのその人の好み次第である。だが、中国では緑の帽子は特別の意味をもっている。
 わたしの工場は、製造現場では全員帽子を着用する決まりになっている。しかし、この帽子、デザインが悪く、頭にピッタシとフィットしない。わたしの帽子はどう考えても大きさがあっていない。それで深く被ることは出来ず、ちょこっと頭の上へおいているような被り方である。わたしの知っている大連の開発区にある日系企業では帽子で役職を色分けしている。課長、係長、班長、組長などと区別してあって、これはこれで非常にわかりやすく便利である。当初は日本人識別用の専用の色もあったらしいが、さすがにこれは短期間でなくなったという。
 わたしたちの工場でも一目みてわかるように帽子の色で識別しようということになった。何色がいいかと協議したとき、いろいろと色がでた。薄いピンクは品管、白は課長、黄色は係長等々である。緑色が出てこないのでわたしが「緑色の帽子もいいのではないか」と言ったら、みんながどっと笑い出してしまった。
 中国人にとってはこういう場合の色としては全く発想に上がってこない色だったからである。男にとって緑色の帽子を被らされることは大変な屈辱なのだという。なぜかというと、だんなの浮気が奥さんにばれてしまった場合、奥さんは懲らしめとして「緑の帽子」をだんなに被らせるというのだ。
 なんどか協議した結果、新規に帽子を買うのでなく、いま使っている帽子をそのまま活かして線をいれようということになった。線の色、本数も決まり、予算は一人あたり5元以下だろうというところまではサッサと進んだ。あとは実施するだけの段階まで来ているのだが、なぜかこれから先へ進まない。どうやら中国人にとってはせいぜい100人程度の人数なので、帽子で識別しなくてもお互いがみなわかっているらしいのだ。そういう事情もわかってきたのでわたしも催促することもせず、そのままになっている。
 最近、テレビドラマの中でまさにこの場面がでてきた。だんなが歳とってできたこどもがじつは自分のこどもではないということがわかって、奥さんをムチで叩こうとしているのだが、“窮鼠猫を噛む”といった感じで、こんどは奥さんがだんなの昔の浮気のことを持ち出して「緑の帽子」をかぶせてやると逆襲している。するとだんながぎゅうっと詰まったような感じで、なるほどこういう風にも使うのか、と生活感どっぷりのドラマを見入っていたのであった。