ふいちゃんの中国日記

生活編/大連カラオケ事情

きょうは初めてね

2006年5月3日

「こちらのお客様は初めてかしら。」
おいおい、このお客さまはおとといもお連れしたのだよ、という表情をすると、すかさず、
「あっ、きょうは初めてよねえ。きょうは。」
と、さっと雰囲気を察して切返してくるのはクラブ京東のママ劉暁麗である。全身がセンサーの塊のような印象で、いつも笑顔を浮かべていながら、それでいて客が何を考えているか、そのセンサーで瞬間瞬間感知しているかのように反応してくる。

ときどき包間を回ってきて、気心がしれた客がいると
「あら、いい雰囲気ねえ。でも少し明るすぎるわよねえ。」
などと、冗談に明るさを一段落とすことがある。すると調子に乗った客が
「まだ明るすぎる。もっと暗いのがいい。」

そんなのある訳がない。明るさが二段階だってきょうはじめて知ったのだ、と思っていると
「もちろん、ありますわよ。この部屋はお客さまのためにきょう特別に三段階に用意したばかりです。」
「うそだろう」
「ほんとうですよ」
「じゃあ、やってみせてよ」
パチパチパチ、と音がして暗くなる。うーむ。なるほどそういう手があったのか。 

全部の明かりを消してもカラオケ用の画面が点いているので部屋のなかはそれなりに明るいのだ。たしかに明るさは三段階ということになる。明かりをすぐに点けてから
「どうぞ、ごゆっくり」
と、納得している面々に笑顔をふりまきながら部屋を後にしていく。

このようにあちこちに顔をだすから、こちらがトイレに立ったときなどたまに通路で出会うこともある。そういうとき、劉暁麗ママはいつもニコッと笑顔で挨拶していく。

階段をあがるときの劉暁麗ママのうしろ姿を一度見かけたことがある。ウエストがキュッと締まりヒップがプイとでていてぞくっとさせる。人はだれも自分の前姿は鏡で見ることはできても、うしろ姿を見ることはできないから、本人はきっとその魅力に気がついていないだろうなと、通路でたまに出会うと思い出す。

内緒の話だけど、劉暁麗ママはまだ20代で独身らしいよ。「還不到30歳」はこの劉暁麗ママに言うべきセリフであったのだ。

【註】
  還不到30歳 hai budao sanshi sui ハイ ブーダオ サンシー スイ
                        まだ30歳になっていない