ふいちゃんの中国日記観光編
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中国語では「国境」である。 陸続きで多くの国と接している中国では国境は決して「中心地から遠い、不便な地」だけではない。 目と鼻の先に川筋ひとつ隔てて外国が存在しているところに住んでいる人々にとって国境という意識はいつも頭のなかにあるに違いない。 春になって対岸の土手に綺麗な花が咲いたからとて、浅瀬を渡ってちょいと向こう岸へ見に行くこともできないのだから。 遼寧省、吉林省で北朝鮮との国境に近い広い地域に多くの朝鮮族が住んでいることはよく知られている。 先に国境があって、あとで移り住んできたのではなく、何百年あるいは何千年にわたって住んでいた同一民族が国と国との事情によって国境という目に見えない線で分断された結果であろう。 だから、行く気になればちょいと行ける対岸に互いの親戚が住んでいるという話にはまったく違和感がない。 対岸の親戚の結婚式などのときはどうするのかと聞いてみたら、申請すれば簡単にビザが下りるのだという。 なるほど、なるほど。 もちろん中国だから公用語は中国語だが、日常会話的にはこの一帯では韓国語が使われている。 場所によっては今でも朝鮮族が50%を占めているところもあるそうだ。土産売り場の北朝鮮語を話すおばさんに聞くと韓国語と北朝鮮語とは若干違うだけでほとんど同じだという。 方言的な差異かあるいは朝鮮動乱後2分された50数年の年月がもたらした程度の違いなのであろうか。 国境とはいっても中国と北朝鮮とは友好関係にあるからか緊迫感といったものはまったく感じられない。 国境の橋の手前にある歩哨台にいる警備兵をいれて北朝鮮へ延びている橋の写真を撮ろうとしたら駄目だと制するので、警備兵が写真に入らないようにすぐ横まで進んで「ここならいいか」と小声で聞くと穏やかの語調で「いい」と返事してくる。 機会を得てこの辺境へ行ってきた。 この一帯は今が紅葉の真っ盛りで自然が一杯のいいところなのだが歴史的な背景もあってか日本人観光客は非常に少ないという。写真は右岸が北朝鮮領で左岸が中国領。 【註】 辺境 bianjing ビエンジン 国境 | |||||