ふいちゃんの中国日記

仕事編

ハエを食わされた

2007年10月17日

大変苦労したり、苦しい目にあったりしたりしたとき、中国語では「喫苦」とよくいう。さらにこの上をいくのが「喫蝿」である。標準語かどうかはわからないが、大連ではこういう表現を聞くことがある。

つまり不本意に嫌な思いをさせられたり、ひどい目にあったりするとこう使われる。ある係長を採用したとき、この人はその履歴からみても大変優秀な人とみていた。本人もこれまでとは違う業種にはいってきて生産現場で一生懸命に仕事を覚えようとしていた。

ところがこの人に対して好ましからず思っていた人もいたようである。ある部長の評価はこうであった。「わたしがたまに職場へ入っていってもこの人は私に挨拶もしない。だからこのような人はすぐにクビにしたほうがいい。」

しかし、これは新任係長のほうが正しい。日本人からみると誰が職場に入って来ようと仕事の手を休めて挨拶するなど必要はない。この人は長年日系企業で働いてきた人なのでそこらへんの感覚は日本式になっていたのであろう。

ところがこの人を評価した部長は完全な中国人で、この部長には日本式感覚はなかった。結局、この新人係長は1ヶ月で工場を去っていくことになったのであったが、最後にこの新人係長と話をしたとき、「私はハエを食わされました」とわたしに説明したのであった。

話を聞くにつれてこの新人係長はどこも悪くなかったということが解ってきたが、時既に遅しで本人はもう嫌気がさしていて工場に残る意志がなくなっていた。将来、工場を担ってくれる人材の可能性を感じさせる人だっただけに残念でならなかった。

しかし、これも縁というものであろうか。

【註】
喫苦 chi ku チイクー
喫蝿 chi cang チイツアン