ふいちゃんの中国日記

観光編

横目でチラチラ、懸命の猿

2005年 10月 20日

 日本流でいえばサファリパークである。四川省M市の中心からバスで30分ほどのところ、自然に囲まれた山の中にあり、空気の新鮮さが実感できる場所。と言っても規模は小さく、専用の車で10分足らずで終わる。しかも外にいるのは虎のみで、狼や豹などは檻の中。
 そこからは車を降りて歩く歩く。「表演」という演じ物が4箇所あって、まず猿から始まる。次いで鳥・ライオン、イルカ、熊・象と見終わってからぶらぶら道なりに人のあとについていくと次の演じ場へ着く。開演時間もちょうどうまく按配されていて、およそ30〜40分で終わる。のんびりと見てまわると4時間の行程である。
 印象に残ったのは猿と鳥。出し物としては格別目新しいものはないのだが、猿が演じているすぐ後ろの山の斜面に野生の猿が数匹やってきて、木から木へ飛び移る猿のほうに目を奪われてその飛躍の見事さに観客は歓声をあげている。かと思うと演じている途中で一匹の猿が逃げ出してしまい、見るからに安作りの隣の売店の屋根の上で体を大きくゆするものだから屋根全体が大きく揺れ、観客はそちらの方を面白がってまた歓声をあげたりして、演じている猿の方はほとんど無視されてしまった格好。
 それでも最後に3匹の猿が自転車に乗って周回する様は格別。1匹の猿が乗りたくないのか自転車を放り出してしまった。すると調教師がムチでバチッ。といっても猿を直接叩くのではなく、バチッと爆竹が鳴るような音がでるムチで猿の近くを叩くだけだが、猿にとっては特別の効果があるのかおびえた表情で自転車に乗って周回を始めた。だが5〜6周する間、3匹のなかのその1匹だけは始終、前方方向をみたかと思うと左横の調教師をチラッと見、また前をみたかと思うと中央にいる調教師を横目でチラと見ながら自転車に乗っている。ずうっとこの調子である。
 数年前、ISO14001の定期審査を受けたとき、新米の審査員が発言の都度、これでいいのでしょうか、何かクレームがつくのではないか、といった表情で左横に座っているベテランの審査員をチラチラ見ながら審査を進めていた光景を思い出した。いつも人の顔色を窺がいながら仕事をしている人間の世界を見ているようで、人間の世界も猿の世界も基本的には同じなのだなあと滑稽に感じながら苦笑せずにはいられなかった。