ふいちゃんの中国日記

仕事編

金型屋

2006年1月19日

 日本の景気がよさそうである。その関係か、日系企業が集中している大連開発区の各工場とも多忙の工場が多いようだ。工場の生産が忙しくなると連鎖反応で金型屋が忙しくなる。開発区及びその周辺の金型屋さんがどこも忙しいという。景気動向をみる場合、金型屋の受注動向をみるのも一つの指標になるのではないかと思えるほどである。
 いい金型屋はすでに進出している大手企業が押さえているので、後発成形メーカーとしてはつらいところである。無理に頼もうとすると外注工場での製作でいいかと注文をつけてくる。外注工場で製作しても元受会社の技術レベルで金型ができあがれば問題はないのであるが、それが簡単ではない。丸投げされるから結局、外注先の技術レベルで物ができあがってしまうことになる。
 8ヶ月かかっても製品ができあがらないので発注先の元受会社へクレームをつけると、逆に「外注工場でもいいと言ったではないか」と逆襲してくる。しかし、こちらも負けてはいない。「外注工場でいいと言ったとしてもそれは客先へ納品できるレベルの成形品ができなくてもいいという意味ではない」ときっぱりという。そしてどうあろうと、使える金型ができあがらなければ費用は一切支払わないのである。ここが日本と中国とで大きく違っている。
 金型は長くて2ヶ月が勝負である。早ければ1ヶ月で決まりがつく。それを8ヶ月かかっても寸法が入らない、バリが出るなどと成形トライの度にくりかえしているのはその金型屋に技術力がないことを示している。実際に加工している現場の若手作業者に聞くと「どういう手を打っていいのかわからない」という。その金型工場の管理者がきいたら、頭から湯気を出して怒ってしまうのではないかと思えるほどの現場の生の声を聞き及ぶと、「ああ、やはりこの工場はだめな金型屋へ分類される工場なのだ」と判定される。いくら寸法が入らないからといっても、「じゃあ、この部分の金型部品の寸法をいくらで作ればいいか教えてくれ。そうすればすぐ作れる。」などという金型屋は縮率ノウハウがないことをみずから公言しているのである。「うちは成形後の製品の形状・寸法でしか評価できない」と突っぱねるしかない。うっかり寸法など言ったら、これでいいといったではないかなどと責任転嫁されてしまう。
 金型屋によっては、この部分は金型は作れるけれど、この材料の成形品でこの寸法を保証できる自信がないので見積を辞退したいといってくる金型屋がいる。こういう金型屋は問題の本質を理解しているからこそ辞退できるわけで、わたしはこういうことが言える金型屋は信頼していいと思っている。一番いけないのは何を押さえなければならないかがわかっていなくて「できます」と安引き受けし、結局うまくできなくて客先へ多大な迷惑をかけることになる金型屋である。