ふいちゃんの中国日記

仕事編

いい通訳とわるい通訳

2005年 10月 31日

 通訳は本来「黒子」に徹するべきだと日ごろ思うことが多い。
言った趣旨を理解して忠実に翻訳し相手側に伝える。これが通訳の生命であると思う。ところが中にはこんな通訳もいる。
 力不足で通訳のレベルが不十分な場合はまだ許せる。いけないのは言ってもいないことを勝手につけ加えたり、自分の意見をさもわたしが言ったかのように通訳する輩である。こちら、ある程度中国語がわかるから、言ってもいないことを言いだすと大体わかる。中国語がわからなくても日本語の時間より通訳の中国語のほうがちょっと長いなと思うときはまずそうである。そういうとき、中国語で注意すると全員(中国人)にバレて通訳の面子がなくなるから日本語で「言ってもいないことを言うな。」と釘を刺す。するとそのときはなおるがしばらくすると同じことを繰り返す。性格なのだろう、直らない。淡々と話をしているのにときには感情的になって怒って通訳することがある。通訳がわたしの立場にいるかのような錯覚現象が頭のなかで起きているのだろう。
 まちがった通訳をするとつい「おい、いまの通訳はおかしいぞ」ともちろん日本語でさりげなくだが言ってしまう。すると「わたしはまちがっていない。あなたの日本語がおかしいからこういうことになるのだ」と逆襲してくる。手に負えない。
 工場で生産している製品に関する話のとき、通訳は多方面(工程・金型・成型機・抜取検査方法・原価計算・損益計算等々)に渡ってある程度熟知していないといい通訳ができない。全体の意味が理解できなくて言葉だけを通訳する場合はえてしてとんでもない間違いを起こす。
たとえば「仕組みの再構築をしなければならない」と言ったとき「仕組みを最高にしなければならない」と訳されたことがある。「さいこうちく」の「さいこう」だけを聞き取っている。しかし、これでは聞いたほうはどういう意味かわからない。「最高ではない。再構築だよ」と言ったら「あなたの発音が悪いからだ」とまたまた逆襲されてしまった。
 それまで現行の抜取検査方法の不具合状況を説明して、だから改善をしなければならないので「抜取検査のやりかたがまちがっている。よって抜取検査方法の仕組みを再構築しなければならない。」と話しているのだから、趣旨が把握できていればこんな意味の通じない訳にはならないだろう。件の通訳はおそらく抜取検査そのものがわかっていないことも考えられる。
 歩留というものがどういうものか、金型のスピアがどういうものなのか、見積計算はどうやってするのか、ある程度わかっていないといい通訳が勤まらない。あいだに通訳をいれて変な返事が返ってきたり、話しがおかしい方向にいってしまうときは大体通訳がまちがっているなと思ってまちがいない。
 多少言葉の不自由があっても通訳を入れないで直接話しをするほうが正確な交流ができる場合が多いので可能なかぎり通訳抜きで話をするようにしている。