ふいちゃんの中国日記

生活編/商品情報

巴斯克林

2006年3月7日

 2006年2月26日、日本へ一時帰国するため早朝大連空港へタクシーで向かっていた。前日の午後から降り出した雪で大連空港が閉鎖されるのではないかと心配したが、夕方6時ころには雪が止んだので、この分では大丈夫だと勝手に決めていた。朝6時、頼んでいたいつものタクシーからアパートの入り口に着いたとの電話が入り、降りていった。運転手の話によると、前日の雪もかつての54年ぶりの大雪のときと同様に市内の方が積雪がはるかに多いという。
 開発区では路上にはほとんど雪は残っていなかったが、市内に近づくと果たして路上は全て雪で覆われていた。例によってタクシーのタイヤはノーマルである。昨日はこの辺りで玉突き10台の事故があったというところを過ぎて赤信号で停まろうとすると、車はブレーキが利かずけっこうずるずると滑っていく。幸いこの運転手は大変慎重な性格で、スピードを余りださないうえ、車間距離を十分に取って運転するので安心感がある。他のタクシーがどんどん追い抜いていくが運転手も気にかける様子はなく、マイペースで運転して行く。
 ふと、前を走っているバスを見ると後部に大きく

     巴斯克林  日本著名入浴剤名牌
     株式会社 津村

と広告が書かれている。なるほど、日本の「津村」の「バスクリン」が中国大連でも売られているのだと初めて知る。テレビではこの広告はまだ見たことがないのでまだ大々的な宣伝はしていないのであろう。だが、よく考えてみるとこの製品ははたして中国でどの程度売れるのであろうかと疑問が湧く。なぜなら、中国は風呂に入る感覚が日本とは違う。日本ではもちろん身体を洗って清潔になる目的とさらに風呂に入ってゆったりとした気分になろうとする要素も強い。中国ではほとんどシャワーで済ませ、それは身体を清潔に保つのが主目的である。
 中国の人口の80%を占めると言われる農村地帯ではまず浴槽はないと思ってまちがいないだろう。さらにお湯の出ない水だけのシャワーだって多い。都市部でもわたしの知っている限りで言えば、ほとんどシャワーで済ませている。もともと日本のように浴槽につかる習慣がない。だとすると「バスクリン」はどのようにして、またどのような階層が使うのか、はなはだ心もとない。それにこの種のあってもなくてもいいような物は衣食住足りて生活があるレベルに達してから使われる物だろう。仮に15億人の人口の20%(都市部)の0.5%が使うとすると150万人。世帯にすると全国で50万世帯。生活様式がかわらないとあまり売れるとは思えないな、などと関係ない会社のどうでもいいようなことを考えているうちに空港へ着いた。
 飛行機に乗り込んで新聞を見たら前日は15時から空港が閉鎖され、18時半から再開されたのだという。もうすこし降っていたらこの日も帰国できなかったかも知れなかったのだと胸をなでおろす。

 【註】
   巴斯克林 basikelin バスーカリン バスクリン
   日本著名入浴剤名牌 riben zhuming ruyuji mingpai 
   リーベン ジューミン ルーユー ミンパイ 日本で有名な入浴剤ブランド
   株式会社 津村 zhushihuishe jincun ジューシーフイシャー ジンツン