ふいちゃんの中国日記

生活編/商品情報

巴斯克林(2)

2006年3月29日

“灯台下暗し”。気がついたら開発区にある“麦凱楽”で津村のバスクリンが売られていた。“麦凱楽”は大連開発区では高級百貨店といわれているが、そのなかの一角に超市があって、そこで売られている。この超市はメガネを頼んでいる宝島眼鏡公司のすぐ隣にあり、ちょうど販売促進員が店頭に立ってこの製品を立ち寄る客にいろいろ説明しているところに出くわした。

一人のすらりとして背の高い30歳前半と思われる女性が「これは違う、わたしが日本へ行ったとき見たバスクリンはこんなのではなかった。」と言っている。販売促進員が「これはまちがいなく日本からの輸入品です。」と説明している。「しかし、このラベルの“巴斯克林”は中国語ではありませんか。」とわたしが混ぜっ返すと「それは中国に入ってから表面にラベルだけを貼っているからです。」と販売促進員が手でラベルを手馴れた感じでさっと剥がして見せてくれた。

確かに、その下は日本語で一杯の説明書きが印刷されていた。なるほど日本製にまちがいなさそうである。というのは日本語で書かれている製品がときどき目に入ってくることがあるが、すぐにせものだとわかる。なぜかというと説明が日本語になっていなかったり、ひらがなが一部まちがっていたり、字の大きさが不揃いだったり、日本では絶対と言っていいほどお目にかかれない何かが違っていて直感的に違和感を感じてしまうからだ。

製品の種類が多くてざっと見て10種類以上ある。「皆さんは通常、浴槽を使わないのにどういう使い方をするのですか。」と聞いてみたら、容器にお湯とバスクリンを入れて足をいれるとよいとか、シャワーを浴びながらこのバスクリンを身体につけてマッサージするとよいとか、どうも日本と違う使い方を説明する。「日本ではふつう浴槽へ湯を張ってバスクリンをいれ、そのなかに身体を沈めて全体をリラックスさせるよ。」といえば「そうです。そういう使い方でもいいです。」と言う。

しかし、じっさい一般の家庭では浴槽のないところもあれば、浴槽があっても日本のようにお湯にゆったりつかる習慣がないのだから、他人事ながら使い方を考えてしまう。値段は筒状の1箱で150元前後する。1回当たりの使用金額は少ないかもしれないけれどこういう品物を使える所得層はまだまだ少ないであろうと察せざるを得ない。

こういう製品が大量に売れるようになるには、こちらの人々がシャワーを使うのは身体を清潔にするためという機能本位の考え方のうえに、さらに日本のように浴槽にゆったりつかって疲れをほぐし、リラックスするという考え方を上乗せするようになるまで待たなければならないかもしれない。それとも津村が中国人の生活習慣を変えることができれば別の話になる。

ここまで書いたあと、仕事の関係である日本人の商社マンと話をする機会があり、たまたま、バスクリンに話が及んで大変興味ある内容を聞くことができた。最近、日本ではこの種の製品が増えて競争が激しく、津村の売上げが思わしくない。そこで販路拡大の一環として中国で売ってみたらどうかということで、日本での在庫品を試験的に売ってみたら、思いのほか売れた。それで中国で大々的に売ることになったというのである。その商社マンもその後の売行きについては情報を持っていず、彼の考えとわたしの考えとは非常によく似ていた。