ふいちゃんの中国日記

社会編/公共

先払い医療費

2006年3月13日

 中国の医療費が先払い方式になったのは、今では多くの人がぼろくそに評価する「文化大革命」が終った後からだという。それまではまず治療が先で支払いがあとだっとのことだ。今は病気になると軽症の場合は一人でもいいが、そうでない場合はかならず誰かが付き添っていかないと大変なことになる。
 受付で金を払って、言われたところへ行くと診察があって、たとえば点滴の場合、処方箋をもらって先に金を払いにいく。次いで薬局へ行き薬を受け取る。診察室へ戻ると点滴はあっちだと別の場所を言われる。薬を持って点滴の部屋へいくと看護婦が手の甲にある血管へ針を差し込んで点滴を始めるが、いつ終るかは患者が自己管理しなければならない。
 だから、患者が重症の場合や歩くのも容易でない患者が自分で金を払いに行ったり、薬を取りに行ったり、点滴の部屋へ移動したり、「点滴がまもなく終る」と看護婦へ伝えに行ったり、全部自分でしなくてはならない。こんな事情があるからであろう、病院へ行くと、必ずと言っていいほど誰かが付き添って来ている。
 つまり、ここも患者のためにどうするのがもっともよいかという観点でシステムが作られていない。病院にとってどういうシステムがもっとも都合がよいかという観点でシステムが作られている。例の国有企業やどこかの国策会社と同じ発想である。
 では交通事故の場合どうするのか、と余計な心配をしたくなる。付き添いなどまずいないだろうし、金をすぐに出せない状況にあるかもしれない。また、手持ちの金がそう多くないかもしれない。「金は銀行にたくさんある」などといくら言っても、そんのは何の効果もないはずだ。だが、そこはうまくできていて、交通事故の場合は例外的に治療が優先するのだという。
 こういう事情がわかってくると、日本の医療制度はほんとによくできているなと感心する。国民健康保険で30%の自己負担で済む。病院へ行くと、患者中心の流れになっているので、てきぱきと治療が進んで最後に「おいくら」とくるから楽である。中国では現金がないと助かる命も助からない。「金の切れ目が命の切れ目」である。