ふいちゃんの中国日記

ふいの中国語講座

俺

2010年8月29日


「俺 an3 アーン」は日本語では通常男性が使うと思っていた。少なくともわたしの生まれ育った地域環境ではそうだった。ところが社会人になってある会社へ就職したとき秋田県出身の人がいて、その女性は同郷の人と話をするとき自分のことを「俺 オレ」と言っていた。これはわたしにとっては異文化と接触した驚きのようなものだった。

中国東北三省では男も女も「俺」を使う。テレビドラマの中ではこの「俺 an3 アーン」はとくに田舎の場面ではごく普通に使われている。中国東北部と日本の東北部、特に日本海側との文化の相似性については何度か気がついたことを述べてきた。

この「俺 オレ」もそういう関連のにおいがする用法である。数十年前の、日本の中にいながら異文化と接触したかのような驚きの印象は現在中国語をある程度理解するようになって、あれは大陸の文化だったのだなあと確信に近い思いである。

つい最近、会社のある遼寧省出身の従業員が退職するとき、その理由を「俺家用事 an3 jia1 you3 shi4 アーン ジイア ヨウーウ シー 私の家に用事がある」とごく普通のように言った。大連でももちろん使われているが、大連方言では「俺家」を「アーンジイア」でなく「an jia1アジャー」と言う。

大昔、日本で「花菱アチャコ」という喜劇俳優がいて「アジャパー」という言葉をタイミングよく使って、その都度観客をどっと笑わしていたが、正にあの「アジャパー」の「アジャ」と同じ発音である。どこからあの「アジャパー」が発想できたのか知る由もないが、「花菱アチャコ」は戦前からの人であり、中国東北部との何らかの関わりがあって「俺家怕〜 an3 jia1 pa4〜 アーン ジイア パー〜私の家は〜を恐れる」を「アジャパー」と聞き取って頭に残っていた可能性はないのでろうか。