ふいちゃんの中国日記

仕事編

母国語

2006年3月22日

 母国語で感情表現するのは格別むずかしいことではない。特にののしったり、怒ったりする場合など、考えもしないのに何年も使ったことがないいろいろ辛らつな言葉が自然に出てくるのに自分で驚くことさえある。ところがいい歳になってから学習した外国語はその国での日常生活体験が不足しているので感情の表現が非常にむずかしい。
 大連開発区の保税区にある某会社の資材課長は中国人の女である。日系企業との取引が多いのであろう、この女課長は日本語が堪能で、その会社には専門の通訳がいるけれども日本語に関してはこの女課長がレベルがもっとも高いと言われている。
 ある製品の見積書に関して、キチンと説明書きを付けて提出したのに「前回の見積書と金額が増えているのはけしからん、釈明しろ。金型費も高くなっている。」というきつい言い方でクレームをつけてきたと中国人スタッフから報告が入った。さっそく電話をした。電話はつながったがどこかと電話をしている中国語の声が鮮明に聞こえてくる。言い方がかなりきつい。しばらく待っているとその電話が終ってわたしの電話にでてきた。
 これまで彼女とは日本語で何度か電話したことがあり、非常に物柔らかな言い方にいい印象を持っていたのだが、電話を待っている間に入ってきた中国語の物の言い方と中国人スタッフからのきつく言われたという報告から性格的にはどうやらかなりきついタイプらしいと当たりがついたので、ちょっと試してみようと思って中国語で話した。
 彼女にとっては中国語は母国語なので自由に操れるのであろう、これまでの日本語でいうときと違ってわたしに対しても非常にきつい言い方をしてくる。見積もりがまちがっていないかどうか確認して至急返事をほしいという。一応クレームの内容だけを確認して電話をきった。
 内容確認したが変更するところは何もなかった。作戦を変えて日本語で返事をすることにして、一つ一つ説明を始めた。金型の保証ショット数を30万個から50万個で要求してきたでしょう、先回の打ち合わせでもそういう場合は通常金型費が50%〜60%値段が騰がると説明しましたよね。それに金属材料は中国製でいいことになっていたのに、先回の打ち合わせで日本製でないとだめだとこれも変更になったでしょう。だから、金型費が騰がったものもあれば据え置きのものも出てきました。金属部品の見積もすべて日本製材料で見積もっており、高くなった部品もあります。高くなったとおっしゃいますが合計では9%も下がっているのですよ。
 と説明したら、「そうですか、そうですか」ですんなりと終了し、納得ということで落ち着いた。中国語の彼女と日本語の彼女とはまったく別人格者のように違う。「あの件は片付いたよ」と、きつい電話だったと報告してきたスタッフに連絡したら、「了不起!」。女課長も日本語が達者とは言え、日本での生活体験が少ないのであろう、わたしと同じように外国語での感情表現がうまくできないようだ。女課長とはこれからはすべて日本語で通すことにしよう。

【註】
   了不起! liao bu qi リアオブチィ すごい!