ふいちゃんの中国日記

生活編/大連カラオケ事情

桂林から来た女

2006年4月24日

 大連にようやく桜が咲いたころの週末、クラブ京東で気晴らしの時間を過ごしていた。私の横にいた小姐が他の指名客のところへ行ったので、代わりに別の小姐がやってきた。
「わたし、3ヶ月以内仕事ない。ママ帰る。」
と、店にきて間もなく1ヶ月になろうとしている小姐がいう。
「別に仕事がなくったってママが帰ることはないだろう。」
「ううん、ママ帰る」

 日本語をなにも知らなくて大連に来て、昼間は日本語学校へ通い、夜はクラブ京東で働いているこのお嬢さんの目標は明確である。日本文としてはおかしいが1ヶ月足らずでここまで言えるのだから、このお嬢さんはきっと短期間で日本語をものにするだろう。

 何度もこのおかしげな日本語を読んでいるとなんとなく意味が通じてくる。このお嬢さんは桂林から日本語の勉強に大連へやってきていたのだ。日本から桂林の“漓江下り”へ行く観光客は多い。“漓江下り”は中国旅行の1つの定番になっている感すらある。そういうわたしもはじめて中国を訪れたときはここへ行っている。

 現地へ行って、山水画の世界が現実にあるということを知らされた。のんびりと2時間くらい、“漓江下り”の船上のベンチに寝そべって周囲の移り行く山水画の世界を眺めているのに飽きることがなかった。それ以降、話題が中国旅行の話に及ぶとわたしは必ずこの桂林のすばらしさを訴えている。

 桂林を訪れる日本人観光客はますます増えているのであろうか。このお嬢さんは大連で日本語を習得して桂林へ戻り、日本人観光客向けのガイドになるのだという。このお嬢さんにとって日本語の勉強は彼女の将来設計に直結しているのである。だから、3ヶ月で桂林へ帰らされるわけにはいかないのである。

 「わたし、3ヶ月以内仕事ない。ママ帰る。」は「私は3ヶ月以内に指名客がいないとママに桂林へ帰らされる」と言っているのである。ちなみに彼女の現在の“工資”は通常の基準工資の半分強であり、この世界の実績主義の厳しさは情実には無関係である。

【註】
工資 gongzi ゴンズー 給料