ふいちゃんの中国日記

生活編/大連カラオケ事情

音痴

2006年4月26日

 日本からのお客さまを案内してクラブ京東へ行った。これまで名前は「カラオケ京東」とばかり思っていたのだが、たまたま昼間、近くを通る機会があってよく見たら「CLUB 京東」となっていたのでこれからはクラブ京東と書くことにする。

 そのお客さまは財務関係の仕事をしている方であるが、歌うのが大好きである。特に加山雄三の歌が大好きのようだ。歌っているときは目を細め、身体全体をリズムに合わせて揺すりながらいかにも楽しそうに歌っている。こういう人を見るとこちらも楽しい気分になってくる。

 だが、このお客さまはものすごい音痴なのであった。曲は完全に別のものになっていて、ご自分で作曲しているのである。普通、音痴というと、ある部分では正確である部分で音をはずすというのが多いが、この方は始めから終わりまで、はずれ放しである。こういう方もめずらしい。

 初めて聴くのであろうか、この方の上司が「お前はほんとに音痴だなあ」とずけずけ言うが、ぜんぜん意に介する様子はない。この方が歌うと、あまりのはずれ方におかしくなりついつい笑ってしまうのだが、そうするとそばに座っているお嬢さんが小声で「笑っちゃダメ」と注意してくる。うん、そうだ。笑っちゃダメだ、と思うのだがどうしてもおかしくなってしまう。

 ところが、この方が歌いだすと、笑い声と掛け声と手拍子とで座が飛び抜けて盛り上がってしまうのだ。中には腹を抱えて笑いこけている人もでてくる。そして3曲目ころからはマイクを持って歌う準備をしただけで、お嬢さんたちから「うまいぞ!」の掛け声まで飛び出してくる始末である。

 だが、この方の上司が歌っているときであった。ちょっと音をはずしてしまったのだ。そうしたら、「そこはこう歌うのだ」と、この方がとつぜん続きの1フレーズを歌いだしたのである。それは全く正確で、一瞬キョトンとした。なんだ!これは。

 そこでわたしは気がついた。この方は決して音痴ではないと。ほんとの音痴だったら、あんなことはできるはずがないのだ。そうだ、これはこの方の芸なのだと。

 その後、この方はさらに何曲か歌ったが、いずれもはずれっ放しで、歌う前からの「うまいぞ!」の掛け声はさらに多くなり、座は益々盛り上がっていったのだった。