ふいちゃんの中国日記

仕事編

接着剤

2006年5月25日

客先の要望でケースを手作りすることになった。
通常は金型で樹脂を流し込んで作るのだが、時間がないというのがその理由。
手作りと言っても日本なら平面の部品に分けて機械加工で製作後、接着剤でくっつけて立体的に仕上げていくので寸法は金型と同じくらいの精度がだせる。

作れるというので、そのように作るのだとばかり思っていたのだが、一向に部品展開している様子がない。
心配になって、どのようにして作るのかと確認したら、自分たちで鋸とやすりで寸法切り出しして作ると言う。

夜のうちに完成させておくというので翌朝楽しみにしていたら、できていない。
原因は何だと聞くと、瞬間接着剤がなくなったのでできなかったと平気な顔をしている。
泥棒を捕まえるために事前に縄を編んでおくということができないのである。

エポキシ接着剤を探させた。
探し出して買ってきたのはいいのだが、主剤も硬化剤も容器には品名がなにも表示されていない。
配合比は1:1で、硬化剤をもっと多くいれればもっと早く固まる。
さらには1:0.5でもよいと言われたという。
ここまでくるとこの配合比はあやしいと直感でわかる。

品名はどうなっているのだ、配合比、硬化条件の説明書はないのか、と聞きただしても“没有”だけである。
埒があかないので自分で確認することにした。
どこで買ってきたかと担当者に聞いても返ってくる返事は関係のない内容ばかり。
つまり、せっかく見つけた情報は簡単には他人には教えないぞという、この国に特有のいつもの態度である。
仕事上必要なので「商店的名字、告訴我。」と強い調子で言ったらようやく名刺を取り出してきてここだという。

車で5〜6分のところにあることがわかったので来てもらうことにした。
ところが1時間後に来てくれたその店の“老板”は専門知識がゼロに近いことがすぐにわかった。
話を聞くと配合比は1:4だという。
馬鹿なことを言うな、硬化剤が主剤の4倍入れるエポキシ樹脂などあるはずがない、と思わず言ってしまった。
結局わかったのは1は硬化剤、4は主剤で、つまり100:25の配合比であることだった。
配合比は主剤:硬化剤でいうのが世界的な常識である。

品名を教えること、配合比と硬化条件の説明書を提供することを要求したが2日経っても何の連絡もない。
間に合わないので自分たちで硬化条件を探し出してなんとか接着することができた。

こうして、たしかに10個を見事に作り上げたのであったが、寸法精度は交差±0.3のところが+4mmもはずれていたものもあったりで、費やした時間から割り出すと1個100元くらいに相当する費用がかかったにもかかわらず、とても客先からお金を要求できるような代物ではなかった。