ふいちゃんの中国日記

観光編/延吉

蛤蟆の冬眠

2006年10月16日

中朝国境にはコンクリートの杭が延々と続いているが、杭を横につなぐ有刺鉄線状の物は何もない。
唯一この横棒を一箇所で見たのみ。
このコンクリートの杭の手前が中国領で、向こう側は中間地帯、ものの1分も歩くと北朝鮮領である。
ここは警備兵がいるわけでもなく、その気になれば出入り自由である。

越境すると一定幅の中間地帯があるのだが、北朝鮮側にはここから先は北朝鮮領土と表示するものは何もない。
ただ、幅50cmほどの小さな川があるだけである。
この横棒の左をちょいと失礼して進むと、すぐ左にここが国境であることを示す石碑がある。

すぐ近くに北朝鮮警備兵がいるという。
ガイドがかすかに口笛を鳴らすと、むこうからも口笛が返ってくる。
「いつものところにいるよ」というガイドの声に少し緊張感が走る。
それからゆっくりと中間地帯を進むと、1分足らずで小さな池に着く。
直径3mほどのこの池が“図們江”の源流と言われている水源地である。
水がこんこんと湧き出ていて幅50cmほどの小川となってここでは南西方向に流れ出している。

この小川が即ち国境である。
小川の向こう側に2人の若い北朝鮮警備兵がいた。
わたしのことを中国人かと聞くのでガイドがそうだと答える。
これで彼らの体面が保たれたことになる。
友好国中国の朋友ということになるのであろうか。
注意されていたのは決して日本語を話さないこと、彼らの写真を撮らないことの二つであった。
写真が公表されると写真に写っていた兵士は死刑になるのだという。

彼らと握手したが二人とも分厚いがっちりとした手をしていた。
こちら側にこないかと中国語で誘われたが、さすがにそれは断った。
彼らも我々の側に来るような素振はまったく見せなかった。
この小川はお互いに越えてはならない線なのだ。

じつはこの水源池に蛤蟆が冬眠しているのだ。
ガイドが「そこにいるよ」と指で示すのでじいっと見てやっと気がついた。
水がこんこんと湧き出ているため水面が波打っていて底が見づらいからだ。
よく見ると蛤蟆というのは「ヒキガエル」である。

日本のカエルは土の中で冬眠することは知っていたが、ここら辺のカエルは水の中で冬眠するのだという。
土の中とは言え、冬はマイナス20〜30度まで下がるようだから湧き水のほうが暖かいということなのであろうか。
当然エラ呼吸するのであろうが、いろいろと適応しているものだ。
冬眠中のヒキガエルは全く動く様子はない。