ふいちゃんの中国日記

生活編/出来事

張寧

2007年1月13日

人の名前で、わたしが通っている歯科医院の看護婦さんである。午後1時からの予約なので、ときとして5分ほど前に医院に着くことがある。そういうとき、受付のまえで仲間の人たちといっしょに竹串のまわりにアイスキャンデーのようについた中国特有の菓子を食べていることがある。

わたしを見ると途端にあわててしまう。そのあわて振りがおかしいのでついついわたしは笑って「ゆっくり食べてください」といってしまうのだが、そのあわてぶりから察するにどうやら物を食べているところを見られるのを気恥ずかしく感じているのかもしれない。
  
この張寧は身長175cmくらいですらりとしている。歳は22歳ということで、しかも看護婦になってまだ1年未満の研修生だという。若いだけあって、その食べっぷりを見ると健康そのものである。

この医院も中国によくあるように専用食堂がなくて、待合席で昼食を摂っている可能性もある。ときどき男の先生がこの席で“方便面”を食べているのをみかけるからだ。

1時の予定がちょっと遅れて着いたときなどは、受付兼会計の女性がどでかい声で「Zhang Ning」と叫ぶと「はーい」と言って、ときには奥の部屋から、ときには横の部屋からひょいと表に出てくる様がひょうきんである。

この張寧は日本語が話せない。歯科の先生とは英語でやっている。このような仕事役割の人で日本語を話せる人はほとんどいないのであろう。英語を話せるというだけでも非常に貴重な存在なのかも知れない。やっていることは日本の歯科衛生士と同じようであるが、彼女はれっきとした看護婦で、中国では日本の歯科衛生士のような制度はないようである。

先生が準備している合間を利用してときどきこの張寧と会話する。先生は中国語がわからないから何のことを話しているかわからないだろうと思うと気楽である。

「年末に歯が痛くなって先生に電話したのだけれど、先生正月休みで日本に帰っていたの」
「いいえ。そういえば一日携帯電話を忘れた日がありました」
「では年内は開いていたのですか」
「はい、そうです」
「そうか。次の日も電話すべきだったなあ」
「ところで、さっき食べていたの、あれひょっとして昼食?」
「いえ、食後の菓子です。」

この張寧、口をゆすぐ紙コップの水がなくなっても補給をしょっちゅう忘れるドジなところがあるが、催促すると「あっ」と言いながら慌ててブシューとすごい勢いで水を足してくれる。一方、先生が歯をギュイーンギュイーンと削って口の周りにしぶきがついたりすると丁寧にティッシュで拭いてくれるやさしさを持ったかわいらしい娘さんである。

【註】
方便面 fang bian mian ファン ビエン ミエン 即席ラーメン
張寧 Zang Ning ジャン ニン 張寧(人の名前)