ふいちゃんの中国日記

仕事編

賄賂の手口(無風不起浪)

2007年3月11日

「無風不起浪」はりっぱな中国語の諺であるが、日本人は見て意味を理解することができる。すなわち、「風がなければ浪は立たない」。日本語で言えば「火のないところに煙は立たぬ」となる。「事が起きるには全て原因がある」という意味である。

中国の商習慣で、とりわけ日本との大きな違いは「賄賂」である。日本もないわけではないが、中国では極端に言えば金の動くところ、大は何万元から小は10元単位まで、全てに発生すると言っていい。例えば物を買う時、あなたのところから買ってあげるから私にいくらください、といった塩梅である。

個人が買う場合は成果は個人に入るから問題ない。なぜなら、出金も個人だからである。ところが、出金が会社の場合は違ってくる。金は会社が出し、成果は担当者(個人)のところに入ってくることになる。直接的には売り手側から入ってくるが、実際は会社の金を横領しているのと同じである。

会社で、こういう噂の絶えない人がいる。とくに購買関係の仕事をしている人、人を採用する立場にいる人など、その気にさえなればいくらでもその機会はあるから要注意である。手口はいろいろである。

こういう口の聞き方一つで、ぼろい金儲けができる味をしめると、まじめに普通の仕事をする情熱が湧かないのも無理ないことかもしれない。しかし、何事もすべて隠しおおうということは不可能のようで、すなわち、煙が漂うのである。人はこういう煙に敏感である。するとすぐに噂が広まっていく。この種の噂の伝達速度はものすごく速い。

人はきな臭い煙を感じ取って、その下にある「火」を想定する。これにはそれなりに憶測する根拠があって、ある購買担当の人は親が貧乏で、今の給料ではどう計算しても買えるはずがないのに若くしてりっぱな家を持っている。きっと賄賂を取っているに違いない、というような暗黙の前提が多くの人の共通推測になっているからである。

これまで周囲の人々が「あれっ」と感じるときの実例を列挙すると

 ?飲み会のときによくみんなにおごる(給料から言ってそんな余裕がないのに)。
 ?財布の中に100元札が大量に入っている(給料からみてそんなにあるはずがないのに)。
 ?よくタクシーを使う(バスがあるのになぜ?なぜそんなに金に余裕があるのだろう)。
 ?小口の買い物には複数の人を参加させるが、大口になると必ず一人で処理する。
 ?よくトイレとか給湯室へ行って電話している(まわりの人に聞かれるとまずい電話)。
 ?普段の仕事はスピードが遅いが、物を買うときになると極めて積極的に動く。
 ?高額の設備を買うとき、初めは「2000元さらに値引きしてもらうことになりました」と言っていたのに、いつの間にかこの2000元が宙に浮いて消えている。あの値引き分はどうしたなどと聞いても、うやむやなわけのわからない返事しか返ってこない。

こういった数々の情報の蓄積の結果が確信的な煙となって漂っているからである。そしてこういう状況下で、ある業者筋から実はあの人からこういう賄賂を請求されました、などという生臭い話が入ってくると煙が火になってしまって、もう消すことができなくなってしまい、その勤務先における会社人生が破綻してしまうことにもなる。こういった実例は多いのである。