ふいちゃんの中国日記

仕事編

落空

2007年3月24日

「空」にはもともと“虚しい、無駄である”という意味があり、「落空」は“当てが外れる”、“目的を達成させないことになる”という意味である。 「希望落空」は“望みの綱が切れた”。「両頭落空」は“両方ともだめになる”。“あぶはち取らずに終る”。(小学館:中日辞典)

 いろいろな賄賂の手口があり、これは100%なくすことは不可能であろう。幸いなことに日本人のモラルは高く、これまで紹介したような会社で物を買う程度のことでは賄賂を取ったりはしない。一説によるとこれはかの国の貧しさが原因しているともいう。

この問題はかの国特有の問題とも言えるかもしれない。だが、これらの問題は手口が非常に単純で、ちょっと調べれば容易にわかることである。こういうことを放置しておくと工場全体のモラルにも影響してくるので、少なくともわかった範囲でかつ、できる範囲で防止策を講じていくしかない。

事前に一般論を説明しておく。つまり、製造部門はものづくりの過程で歩留を上げ、工数を下げ、材料の無駄遣いをしないように毎日努力して原価を下げる努力をしている。そして生産財購買部門は見積価格からさらに値引き交渉してできる限りいい原材料を易く買うように努力している。だから、その他の間接部門も原価意識を強くもって物を買うときは3社〜5社の見積をとり、比較して出来るだけ安く買うようにと理詰めで聞かせる。

手口がわかれば対策はそうむずかしくない。たとえば電脳を買う場合、見積書の価格からさらに賄賂分に相当する推定金額を値引き交渉するようにと指示をだす。こういう場合、どうなったかと聞かない限り、まず報告はない。4日経っても何も報告してこないので、「どうなったか」と聞くと、「すでに値引き交渉しているのでこれ以上は下がりません」と返事が返ってくる。「値引き交渉したのか」と確認すると明確な返事が返って来ないのである。

こちらは既に独自で確認が終っているから最低どこまでは値引きできるという事実に基づいて指示をだしている。恐らく言葉の響きなどで“なにかいままでとは違うな”と感じるのであろうか、これ以上は下がりませんと言った翌朝に100元値引きされた見積書を提出して来たりする。自分の取り分を削ったなということが感触的にわかる。それでもわたしが入手した見積金額よりもまだ高いのだ。

どうしても下がらないという場合は、ではここの店で買うようにと事前に入手してある見積書を見せて購入先を変更させる。さらに、機種を変えて再見積を要求したりすることもある。あれこれと工夫して目論んだ賄賂が担当者の懐に入らないようにしていく。あくまでも間接部門も原価意識をもっていい物をできるだけ安く買うのだという正論で押していく。

結果として賄賂が担当者の懐へ入らないようにして「落空」させていく。これまでなかったような「落空」が発生すると、状況の変化から身の危険を感じるのか突然、辞表を提出してあとのことは「唯恐天下不乱」と画策したりする人間がでてくることもあるので注意しなければならない。

【註】
落空 luokong ルオ コン
希望落空 xiwang luokong シーワン ルオコン     
両頭落空 liangtou luokong リアントウ ルオコン