ふいちゃんの中国日記

仕事編

老板永遠正確的

2007年3月28日

似たような言い方に“泣く子と地頭には勝てぬ”がある。老板は“(個人経営の)商店の主人”のことで、意味は“商店の主人のすること、言うことは常に正しい”。日本で株式会社となっていても規模の小さな会社の実態は個人商店と同じである。だから、よく会社の○△社長の名前を取って、○△商店と揶揄されたりする。従業員の採用〜解雇、給料の増減、方針等々、全ての権力は商店の主人(老板)が握っているからだ。

だから、社長が黒と言えば、白い物も黒となる。「白い物は白ですよ」と主張するのは「お前は俺の言うことがわからないのか」と、やがてその組織からはずされることになる。即ち解雇されることになるから、賢明な従業員は敢えて逆らわないのである。

中国でも基本は同じである。いや、むしろ日本よりも強烈かもしれない。例えば、社長の友人の息子を採用した場合、その息子が数々のチョンボを犯して会社へ大きな損害をもたらしてもその息子の上司は解雇とか、配転とか何も処分しない。処分したら自分が解雇されるのを恐れるからである。

ある金型屋は自分の会社の技術が拙くて、8ヶ月かかっても図面通りの金型が作れなかった。客先へこれ以上の迷惑をかけられないので、金型屋の社長に来てもらい打ち切りにしようと会議をもった。途中で、その金型屋の社長は「私は同じ町の出身でお宅の社長とは古くから昵懇の仲だ、そういう考えならそういうことを社長に伝えるけどいいか」と、携帯電話を取り出していまにも電話しようとした。

“老板永遠正確的”を利用して私たちを脅してきたのである。一緒に会議に参加していた中国人スタッフはうろたえたが、わたしはどうぞお好きにと、その社長を睨みつけていた。結局、その金型屋の社長はなぜか電話をしなかった。
ここに、中国人と日本人との差が顕著に出ている。中国人スタッフがなぜうろたえたか、それは自分たちの社長の朋友である金型屋の社長から自分たちの社長へ何か言われたら、翌日解雇されるかもしれないことを恐れたからである。なにせ、“老板永遠正確的”だからだ。

だが、幸いなことにわが老板は賢明な人であった。その後もいろいろ問題を起こす従業員がいて、老板の朋友との関係がある従業員であったが、一応わたしも“老板永遠正確的”を知っていたので、「しかじかかくかくでその従業員を解雇することが会社の利益になると判断したのだが、いいですか」と老板へ確認した。そうしたら老板は「たとえ縁故入社の従業員であったとしても、あなたが不必要と判断した従業員は私にとっても不必要な従業員なのですよ。」と明言して全面的にわたしを支持してくれたのである。

【註】
老板永遠正確的 laoban yongyuan zhengque de
ラオバン ヨンユエン ジョンチュエ ダ