ふいちゃんの中国日記

文化編/伝統・風習

金型屋のトイレ

2005年11月29日

 仕事の関係である金型工場へ行った。名詞交換のつもりで名刺を渡したが相手は名刺を出さなかった。中国ではこのようなことはザラにある。名刺の向きを相手に見えるように差し出すのは日本の常識だが中国では必ずしもそうではない。いつかなど、なぜだかわからないが名刺交換のときにわたしの名詞をひったくるように取った中国人もいた。
 技術的な打合せが中心で、その主役は名刺を出さなかった人であったが話しているうちにこの人は正直な技術屋さんであることがわかった。だから納期の短縮にしても急がされるといい金型に仕上がらないからと、なかなか譲らなかったが、第一回目のトライで基本的な問題がなければ多少軽い問題点はあってもよいと言ったら、それなら希望通りの納期で製作できるとなり、客先へのサンプル提出がみえてきたので一安心となった。
 できもしないのに簡単に「OK」と返事をもらって結果的にできないのよりこの方がはるかに信頼感をもてる。なんせ今回は1番目の金型屋で1年間トライしてうまくいかなかった上に、2番目の金型屋でさらに8ヶ月トライしてこれも失敗したいわくつきの金型なのだ。普通、金型は1〜2ヶ月で完成する。これが8ヶ月あるいは1年かかってもまだできないというのはこれらの金型屋に基本的な技術問題が潜在していることを物語っている。日本ならとっくに注文がなくなっているところだが、こういうところはいかにも中国的である。
 客先へ多大な迷惑をかけており、客先の国際部品調達計画がこの項目に関しては大幅に遅れているだろうことが容易に想像つく。こちらとしても相当額の売上げ機会損失を蒙ったことになる。この金型屋はその実績からみてかなり技術レベルが高いとみる。
 打合せの途中でトイレを拝借した。案内されたのはわたしにいまにも襲いかからんばかりに歯を剥き出して吠える獰猛な2匹の犬の前を通り過ぎたところにある屋外トイレであった。屋外トイレはこれまでも何度かお目にかかったが、こういうそれなりの技術をもった工場のトイレが屋外にあるのは珍しい。しかもこのトイレには屋根がないのだ。当然「紙」もない。また手を洗う水道もなかった。雨が降った日には傘をさして用を足すのだなあ、そうすると大きいときなどは左手に傘を持ち、右手に紙となるのかなあ、大変だなあ、などと余計なことを考えながら下をみたら深さがなんと2mもあるとてつもない深さに思わずギョッとさせられた。
 打合せが終って工場見学のときに結局、この技術屋さんは設計部の部長とわかったが、この設計部長にしろまたトイレにしろ意表をつく会社だなあという印象が残った。この金型屋の営業マンがよく工場へやって来るがトイレのあと手を洗っていない可能性が濃厚なのでいま中国で猛威を振るっている「鳥インフルエンザ」の予防もあり、これからは食事前にはよく手を洗うようにしよう。