ふいちゃんの中国日記

仕事編

賄賂の手口(通関代行業務編)

2007年7月9日

皆が一生懸命働いた成果をピンハネするのは、汗を流さずに金を手に入れることができるので効率がいい。そしてこのように甘い汁の味を覚えてしまうと、身銭が入ってこないような仕事に対してはやる気を起こさないし、表面上返事は良くても実際には仕事が何ヶ月経っても結果として現れて来ない。よく観察していると自然にわかってくるようになる。

ピンハネのルートをつぶされるとあの手この手を使ってそれを修復しようと波状攻撃を仕掛けてくる。しかし、所詮不正ルートなのだから結論は見えている。

黒幕はピンハネルートをつぶそうとしている人(略称:仕掛人)がまだ気がついていないと思っているのであろうが、仕掛人はとっくに黒幕が誰かを把握しているのだから動きが読めるのである。今回、黒幕は組織の最高トップと親しい外部の人間(仮称:L氏)を動かしてまず、L氏から最高トップへ話を持っていかせた。最高トップから通関担当者へ、なぜ、これまでの代行業者(仮称:Z社)をH社へ替えたのだと圧力をかけさせてつぶされたルートの修復をはかろうとしたわけである。

だが、通関担当者は人間ができていた。逆に最高トップへ、黒幕が勝手に変更した通関代行業者を元へ戻した客観的根拠を説明したのである。これには最高トップも反論ができなかったようだ。結局、この話はL氏へ差し戻しになった。

L氏から直接仕掛人へ電話がかかってきた。今日の昼休み時に外で会いたいということであったが、仕掛人はそれを断り、逆に会社へ来てもらって話しを聞くことにした。すると、最高トップからこの話は仕掛人と直接話しをするように言われたというのである。そこで仕掛人はH社へ戻した客観的評価の経過を説明した。L氏はその話はすでに聞いているというので、それであれば話は早い、で、あなたは何を言いたいのですかと単刀直入に質問した。

Z社はH社よりこんなところがよい、といくつか項目を挙げてくる。しかし、「それらの項目はどれも比較検討済で当社担当者の評価は必ずしもあなたと評価が一致しているわけではありません」と丁寧に拒絶する。

最後に、「Z社採用を認めてくれたら仕掛人に売上げの5%を差し上げます」という実弾が飛んできた。してみると黒幕は10%くらいもらっていたのかも知れない。半分に減ってもないよりははるかにいい損得計算になる。

だが、これも「わたしたちは客観的な事実に基づいて評価したのだから、特別な理由がないかぎり、評価結果をひっくり返すのはむずかしいと思います」とやんわりと断る。倫理観が違うのだからそんな話には転ばないのである。L氏は中国人と日本人との倫理観の違いが理解できていないようだ。

黒幕は各種ルートをつぶされてメリットがなくなったと考えたのか、この後ほどなくして組織の外へ去っていった。

仕掛人は通関担当者をひそかに呼んですでに言っていたのである。「心配するな。何か問題があればこの仕掛人が全責任を持つから」と。仕掛人の経験では中国人の5%は95%の日本人と似た倫理観の人間がいる。幸いなことに通関担当者はこの5%に入っている。   

しかし、仕事はこれで終ったのではない。第二段階の最後の詰めが残っている。このままで終ったら単なるいじめになってしまう。まだまだ長い時間がかかりそうである。