ふいちゃんの中国日記

仕事編

正当性の主張

2005年12月2日

 日本人と中国人との違いで際立つのがまずこれであろう。中国人の一般的な傾向として証拠を突きつけられない限りまず自分の非を認めない。常に自分は正しいとする考え方である。うまくいかないときは常に自分以外にその原因があるという図式である。
 製品を樹脂モールドするとき気泡はいつも頭を悩ます問題である。とくに樹脂の粘度が高かったり、チキソ性のある樹脂だったり、また空気の閉じ込められやすい構造的だったりすると気泡が出やすく、製品の歩留に大きく影響する。空気があってもモールド樹脂が硬化する間にはじけて外へ出てしまえばよいのだが、なかなかそうはうまくいかない。硬化後樹脂の表面にクレーターのような穴が開いたままになっていると不良になる。
 この気泡対策として真空脱泡や脱泡注型の方法がよくとられている。気泡対策として実験するために真空ポンプやデシケーター、耐圧ゴムホース、3方コックなどを買うことにし、絵を描いて購買の担当者へ調査見積を依頼した。約1ヶ月かかって調査結果が報告され、費用約500元で大連でも買えることがわかった。だが、当時その他の要因も検討されていたのでこの購入はしばらく保留としていたのだが10日ほど前に購入指示をだしたところ、こういう器具は初めてなのでまちがうといけないからわたしに直接買いに行ってほしいという返事が通訳から伝わっていた。
 どうしても購入して実験しなければならない状況になったので、購買担当者へ「あした買いにいくぞ」と伝えた。そのはずだったがしかし次の日、担当者は用があるということで休みになっていた。やむを得ず別の者に担当者へ電話してもらって購入場所は聞きだしたものの、渡した資料は捨ててしまったということであった。聞き出した「金馬商城」の5階へ出かけた。目指す店はすぐ見つかり、デシケーターは予定通りの値段であったが、真空ポンプは聞いていた値段より5割以上も高かったのでこれはよそから借りることで実験の段取りをつけた。
 その翌日、購買の担当者が出勤してきたのでなぜ渡した資料を捨てたのか質問してみた。返事は「2ヶ月かかっても買えという指示がなかったので捨ててしまった」という。2〜3ヶ月保留になることなどよくあることで、そんなことで都度都度資料を捨てられてしまったのではかなわない。未処理の案件はしばらくはどこかにしまっておくのが普通である。資料を捨ててしまったことについて担当者は一生懸命自分には非がないことを強い語調で主張している。つまり資料を捨ててしまったのは2ヶ月保留にしていたわたしに責任があると非難している。
 とんでもない言いがかりだがこれが中国式発想法でもある。しかし、日本式管理方法で経営しているこの工場ではこんな言いがかりは通用しない。自分の仕事のまずさを棚上げして人のせいにし、うまくその場をしのいだと思っているのだろうが、不当な正当性を主張すればするほど減点評価をされていることに本人は気がついていない。