ふいちゃんの中国日記

社会編/治安

押込み強盗

2007年9月15日

これはある友人Aさんの体験談である。ある夜の8時ころ、「水道の検針です」と言ってアパートのドアをノックする音があった。彼は何の警戒をすることもなくドアを開けた。すうっと入ってきた若い男はいきなり友人の首筋に細身の包丁を押し付けて「金をだせ」と脅した。

すっかりうろたえてしまった彼はたまたまポケットに4万円を入れていたのでそれを強盗に渡した。もっとあるだろうと催促されてさらに引き出しにあった人民元を1000元ほど渡した。

コンピューターも持っていこうとしたので、さすがにそれは困ると思って、「仕事に必要だからそれは置いていけ」と言ったら、強盗はなぜかAさんの言い分を認めてコンピューターは残したまま「俺の顔を忘れろ。公安へ言うな。15分間は動くな」と捨てゼリフを残して部屋を出ていったというのだ。こういう話を聞くとこの押込み強盗は素人ではなさそうである。

強盗が出ていったあとしばらく呆然としていたが、気持ちが落ち着いてきたので公安へ訴えた。翌日、公安が勤務先の工場へきていろいろと質問されたという。どこに日本人が一人で住んでいるなどの情報は一般の中国人にはわからない。「これまでに部屋に連れ込んだ女の名前を言え」。その女の彼氏が押込み犯人の可能性がもっとも高いからだという。

しかし、Aさんは女を連れ込んだことがないので「ない」というと、公安はさらに「大連では女を連れ込んだとしても罪にはならないから正直に言え」と迫るのだが、ないものはないと言わざるを得なかったのだという。結局、この件は迷宮入りのままになっているそうだ。

そんな経験談を聴いて1ヶ月もしない日曜日の夕方6時ころ、同じように「水道の検針です」という若い男の声である。一瞬友人の体験談が脳裏によぎった。うっかりとは開けられない。音を出さずに覗き窓から見ていると、向かい側の部屋へ移動して同じように言っている。

すると対面の奥さんがドアを開けて男を部屋の中へ入れた。お隣は3人家族なので心配ないのであろう。それを見てから本物だなと判断してこちらもドアを開けた。すると奥さんが水道の検針だと説明してくれたのだった。ドアを開けたまま待っていると、2〜3分で検診を済ました若い男がこちら方へ向かってきたのでそのまま部屋に入れた。

だが、決して警戒を解いたわけではなかった。常に男と一定の距離を保っていた。男はかつて知ったかのように、流しの下の観音開きを開けてから覗き込んで検診を済ました。そして、検針票をわたしに渡して出て行った。

幸い、本物の検診であったが、お隣さんがもし留守だったら、わたしは決してドアを開けなかったであろう。