ふいちゃんの中国日記

生活編/大連カラオケ事情

性感

2005年12月10日

 冬、大連でこの冬最初の雪が降った翌日、日本からの客人があった。
いつものように日本食の店で会食のあと、カラオケへ行った。このお客さんのグループはわたしよりはるかに長い大連経験があってあちこちになじみの店を持っているようだ。今夜は「京東(ジンドン)」へ行こうということになった。この店は大連に2店あり、「五彩城(ウーツァイチョン)」にあるこれから行こうとしているところが本店である。北京にもこの店があってカラオケの傍ら日本から来て勝手がわからない人には事前の予約申し込みがあれば、たとえば、空港からホテルまでカラオケお嬢さんが案内役を果たすサービス業も始めたというファックスが会社へ入ってきておったぞ。
 店へ入るや否やこのお客さんはさっそく「ママさん」をつかまえて「日本のSPから今夜SGが来ると連絡あったやろ」とママさんと自称仲のよいSPさんの名前を出し、「わしがそのSGや」とご機嫌である。冬になると「カラオケ」も客足が遠のくのか、この日は客が少なくどうやらわれわれのグループがどうも最初の口らしい。ママさんが「今は小姐がより取り見取りですよ」とささやく。
 カラオケには一般席と貸切間とがあって一般席は小姐一人がついて100元で、貸切間は120元である。時間には関係がない。状況により使い分けするが、貸切間いわゆる個室を好む客人のほうが多い。自分たちだけの空間を確保できるのが歓迎される所以であろう。個室といっても中は暗くはなく、また外からは誰でも覗けるようになっているのが普通である。とくにカラオケを唄うのが好きな人は間違いなくこの貸切間である。
 酒はシーバースで500元が相場。だからボトルキープがあれば一人100元〜120元となる。あと小姐にドリンクをサービスして30元〜100元。わたしはいつも一番安いのにしろと注文つける。おまかせにすると大体高いのになっている。小姐の売上げに関係するからであろう。
 まず、カラオケお嬢さんが10人はやってくる。その中から自分の好みのお嬢さんを選ぶ。まるで商品のようであるが実際そんな感覚で、さっさと決めたほうがいい。お気に入りがいなければ第2陣の10人がやってくる。小姐がいるかぎりこれを何回でも繰り返すことができる。わたしはいつも面倒なので左から何番目などと決める場合もあればママさんに「適当に選んで」と頼むこともある。
 カラオケお嬢さんの出身地についてはうそか本当かわからないが、開発区は総じて北方面の出身者が多いようだ。あるときなど来る小姐がみな内蒙古(ネイモングー)出身だというので「聞かれたら内蒙古と言え」というような作業標準ができているのではないかと疑ったりしたこともある。吉林(ジーリン)、瀋陽(シェーンヤン)、ハルピン、チチハルなどというのも耳にする。もっとも近いところでは開発区のすぐ隣の「金州(ジンジョウ)」という小姐もいたがこれはどちらかというと珍しい。経済発展の盛んな大連は北方から職を求めて来ている人が非常に多いが、カラオケお嬢さんとて例外ではないということであろう。なにごとも変化のあるところにこそ「チャンス」がある。
 わたしについたカラオケお嬢さんは黒龍江省出身という。黒龍江という字はわたしにとって何か重い感じのする組合せだが「ヘイロンジアン」と発音されるとイメージがぜんぜん違ってなにかしら軽くて新鮮な感じさえする。ママさんに紹介してもらったカラオケお嬢さんで、美形がきたことは一度もなく、何を基準に選ぶのかはさっぱりわからないが、この日の小姐も美形とは縁遠いタイプだった。知っている限りの中国語を駆使して、いろいろな話を聞きだすのが楽しみのひとつである。
 カラオケの画面に日本の女が写っていて、それを見た黒竜江お嬢さんが
「セクシーね」という。
「うん、たしかに色っぽいね」と話が進む。
「ところで色っぽいというのは中国語でなんというのだい」
「しんがーん」
「え?」
「しんがーん」
「どう書く?」
「性感」
「えっ、違うだろう?」
「いえ、性感よ」
「ふーむ、そうか」
 その日、夜帰ってきて字引で調べたらたしかに「性感:性的魅力、セクシー」となっていた。しかし、「色っぽい」で逆引きしたら「有魅力」、「妖媚」となっており、こちらのほうは字と説明のほうとがほぼ一致するが、前者のほうはいまだに熟語のイメージと説明文とが一致しない。