ふいちゃんの中国日記

文化編/感覚が違う?

少数民族と普通話

2008年7月28日

中国が多民族国家であることはよく知られている。少数民族にとって、いわゆる母国語に相当する言語は少数民族の言語であって、中国の標準語である「普通話」ではない。つまり、自己形成の年代に使われた少数民族言語こそがいわゆる「母国語」なのである。

内蒙古族で日本の大阪へ住み、そこで日本の会社へ勤務しているある女性がいる。その人の名前と苗字は日本でいうと、琉球王朝の国であった沖縄県の人々の苗字が一般の日本人の苗字、たとえば佐藤、中村、鈴木などとはまったく違うのと似ている。中国でよく耳にする王、李、劉、馬、毛などとは全くイメージの異なる苗字と名前である。

その人からの仕事上の中国文郵件を読んでいて奇妙なことに気がついた。その人は「跟」を「根」と書くし、「那」を「哪」と書いているのである。中国人がこのような間違いをすることはまずない。

そこで、不思議に思って内蒙古出身の漢族のある人に聞いてみたら、「なるほどなあ」とうなずける説明があった。つまり、少数民族の人にとっては「普通話」はほぼ外国語と同じような意味合いがあるというのである。

日本人が中国語(普通話)を勉強するのは全く外国語を勉強するという意味であるが、少数民族の人にとっても中国語(普通話)を勉強するのは外国語を勉強するのに近いのだという。今はテレビの普及で、どの少数民族も「普通話」を日常的に耳にできるから、日本人が中国語を勉強するよりは中国語(普通話)へのなじみはあるものの、やはり外国語という位置づけは変らないというのだ。

漢族にとってはもの心がついたとき、すでに自然に中国語を話している。漢字や文法など知らなくても中国語が話せる。だが、少数民族の人にとっては母国語である「民族の言語」以外の言語は外国語であって、意志をもって学習しなければ中国語が読み書きできない。だから、少数民族の人にとってはこのような間違いはちっともおかしくないというのである。

【註】(小学館:日中辞典)
跟 gen1 ゲン かかと、あとにつき従う、(先生に)ついて・・・する、・・・と(いっしょに)その他多くの意味あり
根 gen1 ゲン 根、(物の下部、つけ根、根もと)
那 na4 ナー あの、その、あんなに、そんなに
哪 na3 ナーア どの、どれ、どちらの、その他多くの意味あり