ふいちゃんの中国日記

仕事編

安けりゃ買いますよ

2008年8月12日

ある客先の総経理が帰任して新しい総経理が赴任してきた。さっそく挨拶に訪問した。新総経理さんは前任者との引継ぎがどの程度なされたのかと思うほどこちらのことを知らなかった。それでもこちらは仕事をいただく立場なので丁寧に挨拶をした。

この新総経理さんの返事はこうであった。
「安けりゃ買いますよ。」
“買ってやるのだ”という意志を露骨に示していた。こういう客先はこちらから願い下げだなと思いながら
「頑張りますので、今後ともどうぞ宜しくお願いします。」と心とは裏腹の挨拶をしていた。

じつはこの客先は2年間で20数回見積書を提出していたが、一度も採用されていなかった。多品種少量の機種ばかりで面倒なため、大手が相手にしてくれないのがこちらに回ってきていたのである。

スタッフからも時間と労力の無駄だからこの客先の仕事は引き受けないほうがいいという意見を抑えながらお付き合いしてきた経緯があったのである。

凡そ、客先は2種類に大別される。一つは前述のように“買ってやるのだ。ありがたく思え。”という会社である。もう一つは“自分の会社にない工程を外部企業に担当してもらっている。ありがたいことだ。”という会社である。人間の気持ちというのは自然に言動に現れるものである。前者なのか、後者なのかはちょっとお付き合いすればすぐに判別ができる。

どこでも作れる製品で、値段だけの製品というのは競争力があるようで、じつはない。別のところがさらに安い値段を示せば仕事はそちらへ移っていく。

日系企業と地元企業とではれっきとした値差がある。給料、各種保険、福利厚生に大差があるのだからそうなるのである。製品の価値は価格・品質・納期で決まる。いくら値段が安くても品質が悪ければ生産ラインは混乱する。いくら安くても納期通りに製品が入荷しなければ生産ラインはストップする。

日系企業の製品は値段は地元企業より高いが、品質・納期に優れるので総合的には安くあがるのである。中国系管理者の中でも最近は総合評価して日系企業を選ぶ責任者が増えている。納期遅延で損失を最小限にするために責任者はいろいろと動かなければならない。多くの時間と労力を費やして問題解決しても本来のところに戻ってきただけでぜんぜん前には進んでいないのである。後ろ向きの仕事をしなくてもいいようにするのは重要な管理項目である。

そういう意味では日系企業の製品は価格は地元企業より高いが、品質・納期に問題がないので受け入れられているのである。後者のタイプの客先を大事にしていき、前者の値段だけの製品を追求する客先とは無理な安値対応する必要はないのである。