ふいちゃんの中国日記

仕事編

紙上談兵

2008年9月12日

これは成語である。意味は“紙の上で兵法を談ずる(机上の空論)。”(小学館:日中辞典)。こういう人が多くなると仕事がうまくいかなくなる。製造工場は良品を作ってこそ“なんぼ”である。

工業製品の原価の3要素はいわずと知れた?材料費(含:消耗品費)?工数(加工費)?歩留である。品質は歩留に含まれる。品質のいい製品は必ず歩留がいい。一般に品質がいいから価格が高いという人は多いが、これはまちがっている場合が多い。工業製品は品質がいいと歩留が高くなり原価は安くなる。従って競争力が高まり、結果、販売数が伸び、売上高と利益が増加して好循環に入る。こういう工場は技術力が高いという評価になる。

これは工程能力の問題でもある。製品特性のバラツキが小さい製品は20〜30個測定してグラフを書けばすぐわかる。検査で良品と不良品とを選別している情況はほんとは品質はあまりよくないのである。

抜取検査で母数の特性分布を確認して規格に対して余裕があるから全数良品という判定レベルになれば理想的だが、実際にはそうもいかないことが多い。歩留の悪い製品は客先クレームが多くなるのは当然である。人間の目で判断する検査にはかならず“漏れ”が出てくるからだ。これは避けられない。

1回目の検査で不良率が0.1%だったら2回目は0.001%〜0.003%になるのが一般的な経験則である。ところが実際にはこうなっていないことがある。しかもある人は経験則が通用しているのに別の人は2回目が0.01%と不良率が10倍も高いことがある。

これは明らかにどこかにまずいことがあることを示している。考えられる原因はおよそ以下のようになる。

   ? 作業者の良品不良品の判定レベルが間違っている
   ? 検査者の判定レベルが基準とずれている
   ? 抜取検査がランダム抜取になっていない
   ? その他

これは日本ではわたしの経験上なかったことであるが、中国では当り前のような人間が非常に多いことである。つまり、“もう一回検査するのだから適当に検査しておけばいいや”という考えである。

結果が悪いのだから、現状の作業方法にどこか間違いがあるなと考えるのが正常であるが、対策は“作業者の教育を実施する”というのが多い。クレームの解決は“現状把握”が全ての出発点になるべきである。現状把握はまず現場へ行って実際の情況を確認することから始まる。

ところがクレームが発生しても現場へ行かないで会議を開いて“作業者の教育を実施する”などというふざけた対策案を出してくる。客先からみれば“頭にくる対策案”である。クレームが発生しても、製造の責任者も工場の責任者も現場へ行って製品を手に取っても見ないような工場は遠からず客先の信用を失ってしまうだろう。

そういう管理者は“作業者の教育を実施する”という対策案に何の疑問も抱かずに平気で承認のサインをするのである。要するに“品質”とはどういうものかが解っていないからである。

【註】
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