ふいちゃんの中国日記

社会編/経済

新手の商売

2008年11月6日

最近は中国の銀行も順番待ちの札がある。「排隊」の習慣がない、というよりも割り込みが当り前というお国柄から言えば、これは画期的なことかもしれない。わたしがときどき行く「建設銀行」にもこの発券機がある。発券機に用途別のボタンがあって、自分の目的に沿って選ぶ。そして発券のボタンを押すと番号札が出てくるので、それを取って順番を待つことになる。

それぞれの窓口の上には電光掲示板があって、いま何番かがわかるようになっている。銀行員が次の番号になったら放送してくれるので便利である。自分の番号になったら窓口へ行き、番号札を見せてから手続きが始まる。

「新手の商売」というのはわたしの体験ではなく、「Sさん」の体験談である。Sさんがある日、市内の銀行へ行ったら、何十人もの人が並んで順番待ちしている。電光掲示板をみたら200番台である。順番発券機はまもなく400番になろうとしている。これは大変だな。この分だと30分、いや1時間は待たなければならないかもしれないと判断したSさんはあきらめて銀行を出ようとした。

すると、後から「もしもし」と呼ぶ声。振り返ると30歳代と思われる女が番号札を持っている。くれるのかと思ったら「5元」という。番号をみると電光掲示板の番号に近い。「うむ、これは並ばなくても済むな。」と判断したSさんはその順番券を買って、ほどなくして銀行手続きをすませることができたというのである。

この話しを聞いた人々が口々に言う。

「ふーむ、すごい商売だな。」
「元手が要らない画期的な商売だ。頭がいい。」
「1日の売上げは相当なものだろう。」
「銀行がこれを放置しているのはおかしい。」
「いや、銀行とグルになっているのではないか。」
「すると、売上げの一部が銀行の誰かにバックされているというわけですか。」
「その可能性大ですなあ。」
「うーむ、何でもありの中国だが、考えもつきませんでしたね。」
「しかし、これは取締まるとしたら、何の犯罪名になりますかね。」
「ひょっとしたら、法律に違反していないかもしれない。」
「ダフ行為ではありませんか。」
「日本ではそうですが、中国ではどうなのか、はっきりしませんね。」
「日本だったら銀行の人が注意して終りだろうけどね。」

いつの世も囲碁界や将棋界では、鬼才、天才と呼ばれる人がいて、これまでになかった「新しい手」を編み出して世間を驚かし、同好の士を賑わすことがあるが、これぞまさしく「新手(あらて)の商売」であろう。

だが、この新手の商売には一つの弱点がある。混んでいないと成り立たないからだ。大連開発区の銀行では何十人も並んでいる光景はまだお目にかかったことがない。

【註】
排隊 pai2 dui4 パイドイ 列に並ぶ、順番を待つ